子のイラストバックナンバー

2018.10.5

「家庭勉強」から
子どもの未来を考える


 30数年もの長い間中学受験塾に勤務するなかで、将来高いレベルの学力に到達できるお子
さんとそうでないお子さんとの違いで、ぜひ低学年児童をおもちのおかあさんがたにお伝え
したいことがあります。今回はそれを話題に取り上げてみました。

 とはいえ特別なことではありません。今のうちに「家庭勉強」のできる子どもにしておきましょうということです。家庭での日々の勉強が定着するかどうかによって、学力はもとよりお子さんの人生の歩みは大きく変わることになるからです。 ここでいう家庭勉強は、親や大人の強制によって行うものではなく、子ども自身の自発的行動によるものであるのは言うまでもありません。それでも敢えてそれをお伝えしたのは、低学年の時期までは、親の愛情とバックアップで徐々に自発的行為へとつなげていくことが必要で、そこに至るまでは必ずしも自発的勉強とは言えない面もあるからです。

 
 


 まずは、家庭勉強が定着しているかどうかが直近の未来に及ぼす影響について考えてみま
しょう。決めた時間になると自然と机に向かって勉強する。それが3~4年生までにできる
ようになったお子さんは、高学年への進級後も決して家庭勉強を疎かにしません。勉強は継
続的な積み重ねによって効果が得られるものですから、ほぼ間違いなく相当に高いレベルの
学力のもちぬしになれることでしょう。もし中学受験を視野に入れておられるなら、よりこ
のことを強調しておきたいですね。なぜかというと、家庭勉強の自発性が伴っているかどう
かで、親の負担が格段に違ってくるからです。



 学校や塾での授業においては、集団の全員が基本的に同じ指導を受けています。また、学
校や塾では指導のスケジュールが密に組まれていますから、同じことを繰り返しわかるまで
指導してもらえるわけではありません。ですから、学校や塾で習ったことがどれだけ定着す
るか、さらに発展的に高度な領域へと進んでいけるかどうかは、家庭での勉強の差によって決まるのだといってよいでしょう。勉強や受験がうまくいかないご家庭の保護者が、親の学
歴や、子どもの能力を理由に挙げておられるご様子を数多く拝見しましたが、決してそのよ
うなことはありません。学びの習慣や態勢をうまく築けたかどうかがはるかに大きな作用を
果たすのです。

さらに言えば、家庭勉強は生涯継続されるべきものです。子どものころから習慣として当たり前のように定着している人と、そうでない人とでは、一生の間に学ぶ時間や量は比較にならならいほど違いますから、職業選択や仕事のレベルに圧倒的な違いが生じるのは想像に難くありません。つまり、家庭勉強が早くから定着しているかどうかは、人間個々の人生の歩みを大きく変えるのだと言っても過言ではないということです。

 
 



  ここまで私がお伝えした家庭勉強の重要性は、「学力形成」という観点から述べているにす
ぎません。実は、家庭勉強にはもっと大所高所に立ってとらえるともっと重要な役割を担っ
ているのです。次にご紹介する文は、長年学校の教師をしておられたかたの著作から引用し
たものですが、「家庭勉強とは何か」についてわかりやすく説明されていると思います。


 学校での勉強は、子どもたちが将来立派な社会人として、生活していくために必要な知識
を身につけさせるためにあります。そして家庭勉強は、子どもが立派な社会人になるための
「人間らしい心」を学ばせていくためにあると言えるでしょう。
 具体的に言うと、学校での学習はカリキュラムに合わせて、次々と新しい知識を子どもに
与えていくのですが、児童期の家庭勉強は、むしろ子どもが進んでものごとに興味をもち、
知りたいという意欲を通して、その新しい知識を積極的に求めていく、そういう心の姿勢を
養っていくための学習なのです。
 わたしの30数年間の教師生活を通して、おかあさんがたからいちばん強く訴えられたの
は、「どうしてうちの子は、こんなに勉強が嫌いなのでしょう。何とかして勉強の好きな子に
してください」ということでした。
 これこそ、家庭勉強の最大のテーマなのです。親や先生が、いちいち「勉強しなさい」と
言わなくても、自分から進んで勉強しようという気持ちを起こす子どもにするための学習
――これが家庭勉強なのです。


 いかがでしょう。上記引用文にある「人間らしい心」というのは、常に前向きに自らの向
上を追求していく心のありようを述べたものだと思います。日々の家庭勉強を通じてこのよ
うな心を培ったなら、その人は高い知性と教養を携えた立派な大人に成長していくのは間違
いありません。

 お子さんの現在を思い起こしてみてください。勉強を嫌がるようになっていませんか? 
嫌がる子どもを無理に勉強に向かわせようとして、悪戦苦闘しておられませんか? もしそ
ういった傾向があるなら、今のうちに状況を変えていきたいですね。今なら、親の対応で子
どもを望ましい方向へ導くことができます。ぜひ頑張っていただきたいですね。次回は、こ
の点を踏まえた話題を取り上げてみようと思います。

H.S