子のイラストバックナンバー

2018.11.23

学習の習慣化こそ、
児童期前半の大目標


 児童期の前半は学校の勉強で困ることはなく、個々の学力差が比較されることもほとんどないため、保護者の方々も比較的のんびりとしておられるのではないかと思います。

 ただし、リテラシーの基盤づくりや、才能開発(例:算数・数学的なセンスを磨く)など、低学年の今のうちにこそやっておくべきこともあります。高学年になってから生じたかに見える学力差は、児童期前半の学びの内実が顕在化したものですから、学びの重要性は学年を問わず変わるものではありません。玉井式の講座もそれを踏まえているからこそ存在するのですが、お子さんの将来の大成を視野に入れると、「今、何を学んでおくか」ということ以外にも重要な事柄があります。今回は、その話題に取り上げてみようと思います。

 みなさんのお子さんは、勉強と遊びのけじめがつけられるようになっているでしょうか? やるべきことの優先順位をつけたり、時間の割り振りをしたりすることが、徐々にでもできるようになりつつあるでしょうか。また、「遊び→勉強」など、行動の切り替えが一人でできるようになってきたでしょうか? 低学年期までの子どもは、勉強の重要性を自分なりに受け止めていたとしても、目の前に楽しそうなものがあったり、好きなことの誘惑があったりすると、勉強よりもそちらのほうに気持ちが傾き、制御が利かなくなることが多いものです。

 私が小学生の学習指導をしていたときには、「勉強の時間になっても机に着きません。注意すると、いつも親子喧嘩になります」、「やるはずの時間が過ぎているのに、いつまでもゲームをやめません」など、勉強の実行力や勉強と遊びの切り替えに関する保護者からの相談がしばしばあったものです。

 人間は誰でも好まないことには腰が重くなります。「やらなきゃ」とは思っても、肝心の体が動いてくれません。それでも、大人はやらないとどんな事態を招くかを予想できますから、「そろそろやらなきゃ」と渋々腰を上げるのですが、小学生の子どもは先を見通して考える力が未熟なため、それができません。

 このように、目の前にあるやるべきこと(勉強や手伝いなど)を後回しにして、そのときの欲望(テレビやゲーム、友だちとの遊びなど)に負けてしまう癖がつくと、大人になってからも自分を適正にコントロールできない状態が続く恐れが多分にあるでしょう。このことが、子どもの人生の歩みに少なからぬ影響を及ぼすことは想像に難くありません。

 しかしながら、子どもが9歳前後までの年齢なら、この問題を上手に回避することができます。まだ人間として未完成であり、経験や指導によっていくらでも変わることが可能な成長途上にあるからです。

 では、やるべきことをちゃんと実行できる力や、遊びと勉強の切り替える分別は、どうやったら身につくのでしょうか。答えは明白。理屈で子どもを諭すのではなく、“習慣”のもつ力を利用すればよいのです。理屈なら、親は何十回、何百回となく教えているはずです。それでも効果がないのですから、もっと有効な方法を採り入れるべきでしょう。その決定打となるのが“習慣化”なのです。

 では、なぜ習慣化が有効なのかというと、考える前に体が勝手に動くようになるからです。いつも、夕方の5時から30分リビングで勉強する習慣を数カ月も続ければ、体が当たり前のように机に向かうようになります。好きな遊びは禁止しなくても、時間を決めるようにすれば、切り替えも利くようになります。習慣のよい点はほかにもあります。何かを一定時間毎日繰り返すことをしていると、しだいにそのもののもつ面白みにも気づくようになります。そうして、それをやることに意欲をもった人間に成長していきます。この流れがうまくいくと、お子さんはすばらしい成長を遂げることができます。

 ある教育社会学者は、習慣が意欲をもたらす事例として、「食習慣」と「食欲」の関係を取り上げて説明しておられます。その先生は西宮のご出身で、幼いころからイナゴの佃煮を食する習慣があったそうです。食べ慣れると、その食べ物のおいしさがわかるようになります。その先生もご多分に漏れず、イナゴの佃煮が大好物になったそうです。つまり、「食の習慣が食欲を生み出す」というわけです。これは、他のいろいろな行為にも当てはまります。たとえば、「学習の習慣づけが行われると、やがて勉強の面白味もわかるようになり、それがその人間の学習意欲を高めてくれるのだ」ということを前述の先生は述べておられました。

 これは、学習塾に通う子どもたちを見ていても納得できることです。はじめから勉強することに意欲満々の子どもなどほとんどいません。塾に通い、学習の手ほどきを受けることの繰り返しによって徐々に学習の習慣が根付いていきます。そうした過程で、勉強の面白さがわかるようになり、それが学習習慣を一層強化してくれるのです。このような好循環の流れができあがると、自然と塾でのテスト成績も上昇基調で安定してきます。そうして、ついにはやるべき勉強をやらないと自分が許せなくなるレベルに達していくのです。「意欲が高いからあんなに勉強ができるんだ」と思われがちな子どもも、初めから高い意欲に支えられた勉強をしてきたのではありません。

 このことを踏まえると、親がかりで勉強をとにかくやらせようとするのではなく、“いかに習慣づけるか”という視点からわが子にアプローチするほうが、長い目で見ると子どもの将来の大成につながるのだということがおわかりいただけるのではないでしょうか。

 そこで、お子さんの学習の習慣化を図るうえで必要なことをいくつか列挙してみましょう。

  1. 1.毎日の、家庭で勉強に取り組む時間帯を決めておきましょう。
  2. 2.家庭で何を勉強すればよいのかを、お子さんに具体的に伝えておきましょう。
  3. 3.子どもが自分でやれそうなことは「一人でやれるよね」と、少しずつ手を放していきましょう。
  4. 4.ちゃんと予定をやり遂げたら、大いにほめてやりましょう。
  5. 5.予定した勉強を早くやり終えても、次々と課題を与えるのは控えましょう。
  6. 6.読み聞かせや音読など、親子一緒の楽しい勉強も織り交ぜると、お子さんの意欲はより高まります。

 勉強の習慣が身についていないお子さんの場合、上記の1・2をまずは大切にしてください。徐々に家庭勉強に慣れてきたら、できるだけお子さんに自分で取り組む姿勢が根付くよう、少しずつ手を放していってください(最終的には一人でやれる人間にするのが目標ですから)。自分でやり遂げたなら大いにほめてやり、自分の力でやり遂げることにプライドをもった子どもになるようサポートしてあげてください。予定をやり遂げた子どもに「もっとやりなさい」と別の課題を与えるのは控えましょう。親の期待とは裏腹に、意欲をスポイルする恐れがあります。決めたことを、繰り返し毎日やり遂げればいいのです。

 こうして、毎日の勉強が当たり前のこととして根付くようおかあさんが導いていけば、やがてお子さんは確固たる「自学自習」の姿勢を携えた人間に成長していきます。学力は、日々の勉強の継続と積み重ねによって伸びていくものです。そのことは誰でも一定年齢になると理解するようになりますが、その割に実行できない人が多いものです。この状態から抜け出し、やるべきことを着実にやりこなしていける人間になるための最も効果的な方法が“習慣化”することなのですね。

 最後に、同じことを強調しておきます。学習の習慣づけを図るうえで最適な時期は児童期の前半です。まだお子さんが親の働きかけに素直に応じる年齢期こそ、生涯生かせる大切なものをわが子に植え付けるチャンスなのです。高学年になると親の影響力はずいぶんと弱まり、どんなに口を酸っぱくするほど注意しても子どもは耳を貸さなくなっていきます。「良い習慣を今のうちに!」を合言葉に、保護者の方々にはがんばっていただきたいと存じます。

H.S