子のイラストバックナンバー

2018.10.12

家庭勉強の
自発性を引き出すために


 前回は、家庭で自発的に勉強する姿勢を児童期のうちに確立しておくことの重要性についてお伝えしました。また、家庭勉強とはどういうものなのかということについて、長い間教員生活を送られたかたの見解をご紹介しました。

 家庭勉強は、学校や塾の宿題をやることも含みますが、もっと重要な役割を担っています。自ら知識を拡充していく学びの態度を育みながら、人間として前向きな人生を送っていくための土台を形成するという、人間形成の面でも非常に重要な役割を果たしているのですね。

 しかしながら、「なんとかして勉強の好きな子になってほしい」という親の願いに反して、勉強を嫌がる子どもが圧倒的に多いのが現実です。以前お伝えしたかと思いますが、小学校の低~中学年の子どもにとって、新規の知識を獲得すること、「なぜだろう?」といろいろ思案することは本来楽しい営み であり、決して拒絶するようなものではありません。なにしろ子どもには、もともと遊びと勉強を区別してとらえる観念は存在しないのですから。体を動かすことも探求心を働かせることも快感にほかならず、子どもの本能的欲求に基づくものです。







 それなのに、多くの子どもは勉強を嫌がります。その理由を考えてみれば至極当然のことです。「勉強しなさい!」という言葉は、子どもにしてみれば「勉強とは大人から強制される嫌なものだ」という観念を刷り込まれる言葉に他なりません。まして、「勉強、勉強」と連日のように言われ続けると、勉強という言葉を聞くこと自体に拒否反応すら生じてしまいます。保護者にとって必要なのは、「いかにして押し付けないで子どもを勉強に向かわせるか」という視点に立ったアプローチではないでしょうか。誰だって押し付けられると、それがよいことであったとしてもうれしくありません。子どもが自発的に「勉強しよう」という気持ちを起こすような流れを築く方法を考えるべきだと思います。

 そこで、これから家庭内によくありがちなシチュエーションを提示してみますので、あなたがこれまでどういう対応をされてきたかを思い起こしてみてください。そして、あなたの対応が望ましくないとすれば、なぜなのか、どうすれば状況を改善できるかを考えてみる場にしていただければ幸いです。

場面:勉強すると約束していた時間になったのに、子どもはテレビにかじりついたまま。しばらく様子を見たものの、勉強を始める気配がありません。
対応:こんなとき、あなたは次のうちどういう対応をされるでしょうか。
  1. 「勉強の時間よ、テレビを切りなさい」と注意する。それでも効き目がないと、「いい加減にしなさい!」と、厳しく叱る。
  2. 「そんなに見たい番組なら、録画してあげるからあとで見たら?」と言って勉強に切り替えさせる。
  3. 「約束を守れないなら問答無用!」と、TV のリモコンを取り上げてスイッチを切る。
  4. 「早く勉強に取り掛かりなさい」と伝えるが、子どもが何度言っても応じる様子が見られないと、「しようがない子ね」と結局は諦めてしまう。
  5. 「あれ?勉強に時間が来ているみたいよ」と、子どもに注意を促す。
  6. 「しょせん、子どもはなるようにしなならない」と、あきらめる。

 どうでしょう。1~6の選択肢のなかで、あなたの対応にいちばん近いのはどれでしょうか。お気づきでしょうが、望ましいとされているのは2や5のような対応です。なぜなら、子どもを叱らずに勉強に向かわせる効果があるからです。しかしながら、現実に私が見聞きした限りにおいては、1や4のような対応が多いように思います。私も子どもを育てた経験がありますからよくわかりますが、わが子に対しては感情が先走ってしまい、よいか悪いかを考える前に言葉や行為になって出てしまうのでしょう。そこに親の忸怩たる思いを感じずにはいられません。

 
 



 まず、望ましいと思われる2と5のうち、あえて優劣をつけるなら、私は迷わず5を選びます。というのは、子どもに勉強の時間が来ていることに気づかせ、子どもの意思で勉強に切り替えることを促しています。これなら、子どもは叱られたり命じられたりすることへの抵抗感がなく、あくまで「自分から勉強しようとしたのだ」というプライドをもつことができます。こうして勉強に取り掛かったわが子を後でほめてやれば子どもも気分がよく、やがて親に注意を促されなくても率先してやるようになっていく可能性が高いでしょう。無論、子どもが見たくてたまらないテレビ番組があったなら、2のような方法をとるのも問題ありません。

 残念なのは1や4のような対応を延々と繰り返すことです。こういう対応を繰り返していると、前述のように子どもが勉強嫌いになってしまいますし、親への信頼や尊敬の気持ちを失ってしまいかねません。どちらも、子どもの将来に負の影響を招いてしまいます。1のように無理にやらせても、4のように親が諦めても、子どものためにならないのは一目瞭然でしょう。わが子のことゆえの感情の高ぶりは誰にも避けられないものですが、同じことを繰り返さずに済む方法を考えたいものですね。

 3や6のようなタイプの保護者は、玉井式の教室にお子さんを通わされているような、教育熱心なかたにはおられないかもしれませんね。これまで何度も書いてきましたが、児童期の子どもは全面的に親に依存しています。また、親を手本に物事を学んでいます。思慮深く、自分の取るべき行動を考えて行動する姿勢を備えた子どもにしたいなら、こういった対応はできるだけ避けたいものです。

 子どもに自分から勉強に向かう姿勢をもってほしい。そう願うなら、子どもの自発性はどうやって育まれるかを考えると、その方法も見えてきます。親だからこそ湧き上がる感情に身を任せてしまうのではなく、子どものよりよき成長を引き出す対応を優先してあげてください。きっとお子さんは親の願いに気づき、確実に変わっていくことでしょう。

H.S