子のイラストバックナンバー

2018.10.26

わが子を
学びに前向きな人間にするために
その1


 「お子さんには、将来どんなことを期待しておられますか?」と聞かれたら、大半のかたがまずもってお答えになるのは、「人間としてまっとうに成長してくれれば」ということではないでしょうか。

 ただし、こういった原則的な期待を踏まえたうえで、もう少し具体的な親としての期待をおもちのかたも数多くいらっしゃるのではないかと思います。たとえば、玉井式の教室にわが子を通わせておられる保護者であれば、「勉学で一応の能力の持ち主になってくれれば」という期待や願いを例外なく抱いておられることでしょう。だからこそ、玉井式の才能開発的プログラムに魅力を感じ、わが子を通わせておられるのだと思います。

 しかしながら、わが子が小学生になり、学校での正式な勉強が始まると、子どもと学びの関係は徐々に多様化していきます。どんな勉強も受け入れ、興味をもって積極的に取り組んでくれればよいのですが、大概はそううまくことが運ばないものです。そろそろ「好き嫌いが激しい」、「文章を読むのが苦痛なようだ」、「算数を苦手にするようになってきた」などと、心配の種が生じているご家庭もあるのではないでしょうか。また、なかには「勉強を嫌がるようになった」と、当惑顔のおかあさんもおられるかもしれません。

 長年小学生の成長と学力形成に関わってきた私が、小学校低~中学年(特に2~3年生)のお子さんをおもちの保護者にお伝えしたいのは、わが子の望ましい成長を引き出すうえで、今が最も大切な段階にあるということを、忘れないでいただきたいということです。というのも、わが子が勉強に前向きな姿勢をもった人間になれるかどうかの分かれ目が、正式な学習の場に立ってからの2~3年ほど経った頃にあるからです。たとえば、リテラシー獲得の流れが決まる、算数の感覚的素養が固定される、学習の取り組みの姿勢が定まるなど、学力獲得に関わる重要な要素が、それぞれ子どもによって違ってくるのです。そして、その分かれ目でお子さんが親の期待する方向へと成長できるかどうかは、親の出かたひとつで決まるからです。

 子どもというのは、元来好奇心が旺盛で、知ることに対して強い興味をもっているものです。そんな年齢期にありながら、早々と勉強することに否定的な態度を示すお子さんが少なからずいます。その理由を調べてみると、多くの場合、親が勉強を強要したり、ちゃんとできるかどうか、言ったとおりがんばれるかどうかを評価の基準にし、うまくやれなかったり、できるまでに手間取ったりしたときに叱っておられるケースが多いように思います。

 もしもそれに該当するような対応をされているおかあさんがおられたなら、次のことをぜひ心に留めておいていただくようお願いいたします。それは、「わが子を勉強に前向きな人間にしたいなら、もっとおおらかな目で子どもを見守り、失敗を気にせず、ゆっくりとわが子の進歩を応援してあげてください」ということです。というのも、今の親の対応一つで、お子さんが勉強に前向きな人間になるか、それとも勉強に対して消極的な姿勢の人間になるかが決まってくるからです。

 児童教育の専門家は、「低~中学年の児童期にこそ、勉強に対して“快”の感情を育んでおくことが大切だ」と述べておられます。それが、児童期後半以降の学びに影響を及ぼすのみならず、後々の人生での学びに向き合う姿勢に多大な影響を及ぼすからでしょう。私は若い頃、中学受験指導の現場、受験を控えた6年生児童の国語指導に15~16年携わっていました。受験が目の前に迫っても、辛そうな顔一つせず、以前に増して勉強に情熱をぶつけていた子どもは、例外なく勉強を自ら受け入れ、前向きに学ぶ姿勢をもっていました。逆に、最後の段階が近づくと勉強に精彩を欠き、失速していく子どものほとんどは、勉強を嫌々やっていた子どもでした。受験の結果がどうなるかはもはや推して知るべし。どちらが好結果を引き寄せるかは火を見るよりも明らかでした。

 無論、受験の結果がすべてではありません。たとえば、受験に対する認識が甘く、仕上がり不足で志望校合格の夢が叶わなかった子どものなかには、いわゆる一流と言われる大学に進学したケースが少なくありません。「受験の結果を見て、初めて目が覚めました」と私に報告し、以後公立の中学校での活動状況を定期的に報告にやってきてくれ(水泳部の部長や生徒会長を務めたそうです)、高校受験、大学受験と立派な結果を収めた子どももいます。

 こういうお子さんは、受験勉強で自信を喪失したり、勉強嫌いになったりするような経験をしていません。そして、中途半端ではあっても一定の基礎学力を身につけています。だからこそ、中学進学後に巻き返すことができたのだと思います。無論、受験するからにはちゃんと結果を出したいというのが親子ともども偽らざる思いでしょう。そのことを視野に入れたなら、今一番大切にしていただきたいのは、学ぶことに対するプラスのイメージを形成しておくことです。

 だいぶ話が長くなってしまいました。今回はひとまずここで終わらせていただき、次回は「なぜ学ぶことに対する“快”の感情(プラスのイメージ)を築いておくことが大切なのか」について、脳科学の専門家の著作の一部をご紹介し、もう少し掘り下げて考えてみたいと思います。

H.S